「アートと寄付はお金を使う感覚が似ているかも」というtwitterでの一言を見て考え始めたこのエントリ。
周辺情報の整理を含めてものすごく肥大化したため3つになりました。
分かってる人には「知ってるわい!」というネタが大すぎるのは恐縮ですが…。
そして当日にこのネタを語る飲み会の会場でUP。
本編はこのエントリ。
アメリカと日本の税制とマインドにおれる比較、日本で同様の制度とマインドになった場合の超ラフな試算編はこちら。
アートというより寄付先選定を視点とした日本のNPO法人の現状ついての愚痴はこちら。
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そもそもアートは営利活動です。作るにしても売るにしてもご飯食べなきゃいけませんし、過去に遡っても依頼者からの注文を受けて作品を制作納品して対価を得ていたわけですし、作品が貨幣との交換価値を持って流通するようになった後はなおさらです。
しかし、アートには寄付という概念がつきものです。
アメリカを例として税制やマインドにおいてどうかは別のエントリを参照頂くとして、問題はサービスです。
寄付にサービスというと違和感があるかもしれませんが、寄付する側は寄付の対価を最大化することを求めます。対価とは、ある人にとっては満足感かも知れないし、ある人にとってはそれをアピールすることによる社会的地位の確立かもしれません。
海外の美術館やオーケストラなどは、寄付者を満足させるために寄付額に応じたベネフィットを設定しています。レセプションや食事会への招待、内覧会、寄付者限定の演奏会、額によってはオケのメンバーが出張して小編成生演奏なんてオソロしいベネフィットを設定している所があったりもします。
アーティストも同様。作品制作費用の寄付を募る場合、制作過程の公開、一般公開前の内覧、作家からのメッセージカード、場合によっては出来た作品の優先譲渡権まで寄付額によって決まったりします。
日本のアートシーンでは、昨今、私立の博物館において賛助会員制度により海外の美術館に近いベネフィットを設定している所も増えてはきましたが、長年のあいだ寄付対象となるのが公共事業的な美術館・博物館がメインだったこともあり、ほとんどが「あくまでもノーブレス・オブリージなんだから。控除してるし」という程度の認識しか無いように思います。
…というのはこれまでの話。
インターネットの過剰とも言える普及により、実は寄付をベースとしたアート関連NPOの運営って楽になるのではないかというのが主題。
●そもそも寄付って何。何に使うの。
そもそも寄付とはなんぞやと申しますと、下記の2つを満たす収入。
・支出する側に拠出の有無と金額について任意性があること
・直接の反対給付を受け取らないこと
アートにおけるNPOへの寄付の使い道を勝手に分類すると下記のようになる。
1.作品の制作費用
2.作品展示費用
3.作品の展示情報提供
4.作品の情報化(データベース化)
5.国際交流と海外への発信
6.啓蒙活動
ちょっと深読みしてみましょう。ポイントは「直接の反対給付を受け取らないこと」。
例えば、wikipediaへの寄付は広義の寄付なのか。
個人的には「任意のサービス対価」なんですが、定義としては寄付。
もうちょっと深く突っ込んでみる。
「不特定多数に対してインターネット上で公開されているメディアアートがある。その制作費と展示費用(サーバ代)を作品を指定して寄付する事は可能か?」
定款に芸術作品制作支援と芸術作品展示が入っていれば可能。対象を指定しての寄付は可能だが、法人の経理運営は面倒になる。
寄付を受けて制作した作品の権利はどうするのかという話はありますが、他所での展示および販売は作家に一任してタッチしない選択も可能。
●寄付の対価
インターネットが普及しようが時代が変わろうが、やはり寄付者には対価が必要。
なのですが、インターネットでのコンテンツやスキームに対する寄付の特徴として、実質的な事後支払いであることがあげられる。
例えば、「wikipediaに寄付するのはwikipediaを使ったことがある人」なわけで、
上記のメディアアート関連で言うと「当該作品または作家の過去の作品を誰でも見られる」という、対価の先出しが重要。
インターネットで対価の先出しが可能そうなものとしてぱっと思いつくのは下記。
多分ちゃんと考えたらまだまだある。
1.インターネット上で公開できるメディアアートへの制作費用・展示費用寄付→支援
2.インターネット上で展開できる展示情報提供(東京アートビートですね)
3.作品オンラインデータベース化→レゾネ化(公益型artprice?)
●課題
課題は投げ銭システムが必要であることとプロモーション。
インターネット上で寄付をする限り寄付者の特定は容易に可能だが、残念ながら寄付の手段自体が難易度が高い。
現在インターネット上で送金できるスキームは大きく分けて以下の6つ。
・インターネットバンキングを使用した銀行振込
・クレジットカード払い
・プリペイド
・電子マネー(主に携帯。ICカードリーダ経由は普及率からして無理)
・総合決済サイト(Yahooウォレット、paypal等)
・携帯キャリア課金
・iphoneのアプリ内での追加課金(税制とニッチさはあるけどアイデアとして)
選択と構築にあたっては、1に寄付の容易性、2にコストで選ぶしかない。もしくは作るか。
作るという選択肢を除外すると、選択肢は限られてくる。
小口の寄付を集めるのは結構難易度が高い。単純にPV数とコンバージョン率の勝負になるから。
近い存在で行くと、薄利多売型ECサイトの悪夢は結構ひどいものです。売り上げが片っ端から広告宣伝費に消えていく。
一社寡占的な状況なら違うのですが、競合がいるとひたすらコモデティ化一直線。
NPOだとコモデティ化はしないでしょうが、同額の寄付を得るために投下するサービスの増加という罠が待っている。小口の寄付を前提にしているとこれは致命的。
営利事業ではないからこそ、競合しないサービスの開発とviralに頼ったプロモーションを考えなきゃいけないというジレンマ。
なんか小口の寄付に拘ってるねーと思われるかもしれませんが理由は2つ。
インターネットでの小口投げ銭が心理的に容易なことは、iphoneや携帯でのApp売り上げ、各種楽曲の有料DLを見ていれば明らかだからなのが一つ、
もう一つは小口×多くの人からの寄付が認定NPOの要件だから。
●認定NPO化へのアプローチ
元々日本は1円玉募金小口寄付の社会ですから、薄く広く寄付を募るというありかたが正しいとされてきた。この考え方は現在も継続されており、社会的には認定NPOの要件であるパブリックサポートテストに反映されている。
パブリックサポートテストは、過去2年の経常収入のうち、寄付金収入が一定割合以上であることが条件。
ここでいう寄付金とは寄付者1者あたりの寄付が1000円以上かつ総受入寄付金額の10%以下であり、寄付者が明確になっている必要がある。つまり、広く一般から支持されており寄付を受けていることが重要な要素。
インターネットでの投げ銭的寄付を積み重ねることは認定NPO要件を満たす方法として成立しうるかもしれない。
例示したiphoneや携帯でのApp売り上げ、各種楽曲の有料DLにおいては、1000円は決して小口ではないのだけれど…。
認定NPOになると何がありがたいのか。
まず、寄付時の控除額が増える。個人からの寄付はほぼ全額が控除され、法人からの寄付は損金算入額が倍増する。
自ら税制は寄付に対する障壁の第一因ではないと別エントリで書いておいてなんだが、日本においては寄付の70%が法人からのものであり、法人のロジックは株主に説明がつくかどうかと損金算入が可能かどうかなのだから、法人からの寄付に対する損金参入額の増加メリットは得ておくべき。倍増した部分の金額は指定寄付金と認定NPOを含む特定寄付対象でしか損金算入できないため、一般のNPOよりも格段に寄付を受けやすくなる。
次に、イメージの問題。3万5千ほどあるNPOの中でも、認定NPOは60程度です。NPOにつきまとうアヤシゲなイメージから離脱が可能。
おまけで、新たにNPOを立ち上げて認定NPO化する際に、総寄付金額の10%となっている一者からの寄付金上限が、認定NPOからの寄付であれば50%になるため、別の公益事業をしようと思った時のハードルが低くなる。
ネガティブな面として情報公開範囲の拡大、青色申告と同等の経理、役員に占める親族/特定法人関係者の割合が1/3以下という程度の縛りはありますが、そんなの営利事業やってりゃ普通。
総事業費における80%以上、受け入れた寄付金の70%以上を特定非営利活動に使用していることという条件がありますが、微妙なのはこの項目。
寄付を求めるために使用できるのは最大でも総事業費の20%まで、寄付金の30%までという事になるのですが、決済会社の手数料率は非常に高い。やはり投げ銭システムが課題です。
ちなみに、具体的な例で恐縮ですが、現在東京アートビートが寄付を募っており、将来的に寄付収入が継続的に入ってくるのであればこのスキームに乗る可能性があるのではないでしょうか。
インターネットでの対価先出しであること、主たる事業への寄付であること、投げ銭システムを一応準備していることの3点は満たしています。
意図的に金額を1000円〜1万円に設定したのかは謎ですし、東京アートビートは別エントリで書いたようにその他事業収入と助成金収入が大きいため、認定NPO化は難しいかもしれませんが…。
⇒TABの人に聞いたところ1,000円〜に設定したことに大きな理由はない模様。投げ銭よりも意識的なコミットがほしいという事の現れだろうか?(1,000円は一般的に寄付として決して小さな額ではない)
●個人的にすごく気になっていること
ここまで読んだ気の長い方はいらっしゃるのか気になるところです、というのはさておき。
個人的にはアート関連NPOはもっと事業を拡大してほしいものです。自分で参入する余地があればやってもいいくらい。
しかし、できればアートに興味が薄い一般へのマトモな啓蒙活動(啓蒙活動について気になることはこのあたり)と作品制作への支援に活動を向けて頂きたいと思うのです。
以前からアート関連NPOの公的開示情報を見ていて一つ驚いた事があります。
作品の展示や制作の支援が定款に入っている法人とほぼ同数、啓蒙活動や作品の収集販売を併記している法人がある。
このエントリに書いた、資産家個人または法人が1名から数名で供出している資金で回っている事業者なのかもしれませんが、それにしては数が多い。
NPOで所有する以上は売却益を期待することは難しく、販売は税務上の課税業種と判断される可能性がある。にもかかわらず作品の収集販売を記載しているのはどういう事なのだろう。
⇒実際に販売を定款に記載してる人の一人と話して納得した
目的は不明ですが気になるのは1点、「多数からの実質的な出資を作品の価格に反映させるのは如何なものか」ということ。
海外において数年前からアートバブルが盛り上がり2008年のリーマンショックを起点として2009年にはじけた、ということがよくいわれます。
本当にバブルだったのかはじけたのはさておき、マクロ的には金融グローバリズムによって生じた富裕層の投資マネーがアート市場に参入したとされていますが、アドバイザーとギャラリーによる投資マネーの誘導と、一部のファンドおよびノンプロフィットセクターがプレイヤーとして参入し、他者の資産をアート市場への投資行為に突っ込んだという要素は大きかったのではないでしょうか。
⇒やっぱり過剰な価格コントロールはよろしくないと思うの。特にノンプロフィットセクターがやるのは。