アート1を見慣れていない人からマニア級の人までごった煮でとある展示を見てきました。
そこでちょっと気になったこと。わりと苦言気味。
●アートについての啓蒙活動とは何か
ある場所に展示されている美術作品を語るには、いくつかの切り口が存在する。
個人的には下記の7つなのですが、1〜6は「知識が必要で解りにくい」らしい。
1.作品に含まれる思想や問いかけ
2.1に対する自分なりの解
3.作家の他作品や経歴
4.製作方法、技術
5.展示されている他作品との関連性
6.コンテクストに対する作品の位置付け
7.素直な面白さ
そもそもアートって何よというところからいくと、ジョン前田氏の言葉を借りれば「アートは問を発するもので、デザインはソリューション」。全くその通りだと思います。
デザイン=ソリューション=課題に対する解を提示すること=見る側にとっては解りやすい解を提示させること、
アート=問いかけを提示すること=解は見る側が考えるもの。
問いに対する解は人それぞれであるべきで絶対的な解は必要ないし、作品によっては、何を問いかけているのかすらも自分の解釈でいい。
さて、そこで「でもやっぱり難解なんだから解りやすくしましょうよ」と言われると困るわけです。
問いを発するものに対して解りやすい解決や解釈を与える事がアートの楽しみ方/啓蒙なのか?
それってカノッサの屈辱2の逆バージョンじゃないのかと思ってしまいます。
カノッサの屈辱は視聴者が知っている消費文化を諧謔的に遊ぶからこそ面白いのであって、逆にしてしまうと、アートの価値の一つである日常生活の範囲でしか思考しない事からの脱却を求めることを減じてしまうのではないかと。
アートの免罪符(言い換えるなら制約の無さ)は良い点でもあり悪い点でもあるのだけれど、
良い点である自由さや社会への問いかけを、解り易さという制約で狭めるのは間違っているのではないでしょうか。
悪い点として、好んで解りにくくしているような方もいらっしゃって、それはそれで如何な物かと思うのですけれども。
●長年見ているとエラいのか
時々いらっしゃいます。「**年見てきたけど云々」と仰る方。
そういう方に「あなたのコレクション(買うのはカネかかるので脳内でもOK)には何が入ってるのですか?その作品/作家を選んだ理由はなんですか?」と聞いてみた事も昔々あるわけですが、自分の基準を1つ以上明確にお持ちの方3もいらっしゃるものの、「そんなものはないが長年見ているとわかることがあるのだ」という方も多い。
ただ見てきただけで解るのはメインストリームの変遷くらいであって、テレビ垂れ流しと変わらんではないかと私は思うのですが、「美術館行きます、アート好きです」というのがステータスだと信じて疑わない方々4も結構多くいらっしゃるわけで、しかもそれが美術館に行く人のメインストリームであるのも事実。
アートは身近に置いて楽しむもの/考える材料にするものだという視点が欠けている人が多いのは、実はこういったテレビ的消費cultureとしてのアートという文化が根付いてしまっているからなのではないかと思うとともに、上で書いた「解りやすさによるアートの啓蒙」というのは、結果としてこういった「美術館に行くだけ」の方々が増えるだけなのでは…とも思うのです。
●所有する楽しみも体験してみましょうよ
「アートを買う」という行為はどうやら一般的にもの凄く敷居が高いようです。
そのためか、「ギャラリーなんて買えないから行けない」という方も多いらしい。
ウインドウショッピングのつもりで行けばいいと思うのですが…。
大御所モノの作品は手の届かない値段になってしまいますが、若手のものなら数千円数万円から入手できます。
運が良ければ、自分が惚れ込んだ作家が評価されるまでの経過を楽しんだ上に、持っている作品の価値が化けることもあります5。
まるでインディーズバンドやジャニーズJrに入れ込む人みたいですが、若手作家の作品を買うというのは概ね似たようなところがあります。
何よりも、自分が惚れ込んだ作品を手元に飾るというのは楽しいこと。
工芸品をはじめとする使える作品であれば、飾るだけでなく使い倒してもいいのです。
臆せずギャラリーやアーティストに突撃してみて入手してみてはいかがでしょうか。
専属のギャラリーがある作家さんでなければ、直接作家から買うことも可能です。
私自身も作家の考え方や作品に込めた考えを聞いてから買いたい人間なので、作家さんと直接話をして買う/制作してもらう事が多いです。
ちなみに、ギャラリーで開催されるオープニングレセプションは大抵の所が一般客でも入れます。
内輪感漂いまくってる所に行くのが嫌なら友人を一人二人連れて行けばいい。
アーティストも来てるし作品も見れるしメシ食えるし6行って損はありません。
- ここでは主に美術作品に精神性や思想性、コンテクストに対する解決が求められるようになった後の現代美術を対象としてアートと書いています [↩]
- 1990年4月9日から1991年3月25日までフジテレビで放映されていた、日本の消費文化史を歴史上の出来事に(無理矢理)なぞらえて解釈し、あたかも教育番組の様な体裁を取って紹介(講義)する番組 from wikipedia [↩]
- 時折、沢山の基準があって覚えきれなかったりカネがかかったりしてる方もいらっしゃいますな。我が家もその一つですねはい。現代アート好きと工芸好きが結婚するとタチが悪いという例の一つ。 [↩]
- 個人的には都美でよくみかけるおばさま方の集団を例に挙げる [↩]
- よほど生活に困るか人生の転機でもない限り、大事に飾っておいてあげましょう [↩]
- タダ飯タダ酒目的で行かないように!! [↩]
